今後の相続対策のあり方

相続対策を兼ねて、次男にマイホーム取得資金の一部を援助していた人に相続が発生しました。こ の人は二世帯住宅を建てて長男夫婦と同居していました。長男夫婦には本人だけでなく妻も、介護を 含め世話になっていました。本人夫婦、長男夫婦、次男夫婦はとても仲が良く、遺言は特にありませ んでした。

残された財産は自宅と預金が少しでした。親族は遺産分割協議を行いましたが、自宅の相続をめぐ り、長男夫婦と次男夫婦の言い分か食い違い、まとまりませんでした。長男夫婦は当然、自宅は自分 たちが相続するものと思っており、次男夫婦は、自宅を含めて法定相続通りに相続するものと考えて いました。この結果、兄弟の伸が冷え切るだけでなく、相続税の申告期限である相続後10ヵ月以内 に遺産分割協議がまとまらなかったため、相続税の特例を受けられなくなりました。そして、残され た妻は相続税の納税のため、生活資金にも事欠くようになってしまいました。

また、別の人は、相続対策のため借入金によってアパートを建てました。しかし、アパートが古く なるにつれ空室が増え、修繕費もかさみ、借入金の返済が滞るようになりました。その後、相続が発 生しましたが、古くなったアパートは売却できず、遺族は泣く泣く自宅を売却して、借入金の返済と 相続税の納税にあてました。

このようなことは資産家や、バブルの崩壊によるものだけではありません。長子相続や地価上昇に よって隠されていた問題が表に出て、これまでの税金だけ不動産だけの相続対策では解決できなくな ってきたのです。

さらに、平成一五年度税制改正においては、相続税・贈与税の一体化と言われる、生前贈与の促進 を狙った「相続時精算課税制度」が創設されました。この制度は相続税・贈与税の大改正であるだけ でなく、今後の相続対策のあり方を根本から変える可能性を秘めています。以下に説明するように、 これまで少しずつ変わってきた相続のあり方を、決定的に変える契機となりそうです。

従来から、相続対策として「相続税の軽減」を検討する人は多くいました。そして、戦後の民法改 正で長子相続(家督相続)から均分相続に変わり、相続に関するトラブルが増えてきました。そのよ うな中で「円満な財産の分割」が重視されるようになりました。また、土地や非上場株式など換金し にくい財産が多い人は、相続税の「納税資金の準備」が欠かせません。

さらに、相続時精算課税制度を活用すると、少ない贈与税負担で多額の生前贈与が可能になります。 今までは遺言によって、自分の財産を「誰に」「何を」配分するかを決めることができましたが、これ からは、生前贈与を活用して「いつ」配分するかも決められるようになりました。

しかし、相続人の一人に多額の生前贈与が行われた場合、相続時に残りの財産を円満に分割するこ とが難しくなる可能性があります。また、この制度では贈与財産は相続財産に合算されて相続税が計 算されます。ですから、贈与財産を使ってしまった場合など、相続税の納税資金に困る可能性も出て きました。

すなわち、今までのように「相続対策とは節税対策」「財産は 長男が相続する、または法定相続割合通り均等に相続する」「贈 与税が高くて生前贈与はできない」「地価は上がる」などの常識 に従って相続を考えていると、うまくいかない例が増えてきま した。今まで以上に「納税資金の準備」「相続税の軽減」など税 金のこと、遺言を含めた相続時の「円満な財産の分割」を、バ ランスよく検討することが重要です。

そして、日本人の財産の大半は分割・売却しにくい不動産で す。不動産はなお固定資産税などの負担から免れませんし、今 後は地価や賃料の上昇もあまり期待できません。単なる賃貸建 物の建設にとどまらない不動産の賢い有効活用を検討する必要 があります。

このような社会、法律、税制や考え方の変化に伴い、相続に ついて、税金だけ不動産だけ遺言だけで考えるのではなく、そ れらを総合的に考える必要が高まっています。通常、対策を考 えないと困るのは本人ですが、相続の場合困るのは本人ではな く、愛する家族である相続人です。愛する家族のためにも、そ して安心して豊かなシニアライフを過ごすためにも、家族みん なで早めに対策を検討することが大切です。

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